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利上げで株価は下がるは間違い!過去のアメリカの利上げの影響を検証!

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アメリカの利上げ開始は景気の後退の始まりか!?

 リーマンショック以後金融政策により2009年から拡大してきたアメリカ経済が利上げの局面に入りました。ブログを見ていると株価が下がると書いてあるものも散見されます。

 今回は利上げ後のアメリカ経済の動向を過去の利上げ時にアメリカ経済がどのような拡大・後退の景気循環をとったかを見ていきたいと思います。

FRBの利上げとは

 そもそも今回のアメリカの利上げはFRB(米連邦準備制度理事会)が、低金利で必要以上に市場に資金が出回りバブル景気になることを防ぐために政策金利の金利を上昇さることをいいます。これはアメリカにかかわらず、世界中の中央銀行が行う重要な役割の一つです。逆に景気が悪化した場合には利下げが行われます。

 利上げを行なうと、借入金利が上昇し、企業の設備投資、 個人消費や住宅投資が抑えられ景気にブレーキがかかることとなります。今回は金利の上昇がかなりゆっくり行われると予想されています。

政策金利・フェデラルファンド金利とは

 政策金利とは各国の中央銀行が決定する金利を指します。アメリカの場合、フェデラル・ファンド金利(FF金利)となり金融政策の誘導目標金利となっています。

 過去の政策金利とFF金利の過去データの推移と入手方法はアメリカ政策金利の推移と長期データのダウンロード方法 フェデラル・ファンド(FF金利)の推移と長期データのダウンロード方法 を参照してください。

 

 フェデラル・ファンドとは、アメリカの民間銀行が連邦準備銀行に預けている準備金のことです。この準備金は義務付けられているものであるため無利子です。

 フェデラル・ファンド金利とはその準備金を維持するために銀行間が資金調達を行うための短期金利のことです。

 このFF金利が政策金利と同じになる様に連邦準備銀行が市場を操作しています。そのため両者にはほぼ完全な相関関係があります。

 相関関係についての詳細はこちらの記事で紹介しています。

gakushi-investment.hatenablog.com

金利上昇の見通し

  FOMC参加者のFF金利の今後の見通しを示す「ドット・チャート」を公表しています。現時点で最新となる2016年12月の金利予想は下図のようになっています。

 数年前の予想より将来の金利見通しは低く予想されており、今年末時点で中央値が1.375%となっており3年後の2019年末においても3%に満たない予想となっています。

(図1 連邦準備制度理事会の金利見通し)

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(出展:連邦準備制度理事会https://www.federalreserve.gov/

過去のアメリカの景気循環

 経済は発展するばかりではなく拡大期と後退期を交互に繰り返すものであることは経済の常識ですが、第二次世界大戦以後のアメリカの景気循環は次のとおりです。

(表-1戦後のアメリカの景気循環 出展:NBER) 

  景気の
ピーク
景気の底 収縮後退
期間(月)
※1
景気拡大
期間(月)
※2
循環(月)
※3
1 1945年2月 1945年10月 8 80 93
2 1948年11月 1949年10月 11 37 45
3 1953年7月 1954年5月 10 45 56
4 1957年8月 1958年4月 8 39 49
5 1960年4月 1961年2月 10 24 32
6 1969年12月 1970年11月 11 106 116
7 1973年11月 1975年3月 16 36 47
8 1980年1月 1980年7月 6 58 74
9 1981年7月 1982年11月 16 12 18
10 1990年7月 1991年3月 8 92 108
11 2001年3月 2001年11月 8 120 128
12 2007年12月 2009年6月 18 73 81
平均月数 10.8 60.2 70.6

1:「今回のピーク」から「今回の底」

2:「前回の底」から「今回のピーク」

3:「前回のピーク」から「今回のピーク」

 

 

平均値に注目すると、

  • 景気後退が始まると1年以内に底を迎える
  • 景気の拡大期間は約60ヶ月(約5年)

前回の景気の底が2009年6月であり2017年1月現在で91ヶ月(7年7ヶ月)経過しています。今回の景気拡大が長期に及んでいることがわかります。また後退局面は一気に後退しまた拡大期に入る傾向があることがわかります。

利上げのアメリカ経済への影響

過去の利上げ景気循環の関係

 1985年以降にアメリカが利上げを行った回数は4回あり、今回が5回目となります。そして景気後退は3回ありました。

 下のグラフでは利上げ期を赤景気後退期をグレーで表示しています。それぞれが重複していないことから、過去の利上げにおいて、順調に利上げが行われている間は景気後退が起きないことがわかります。

 そもそも利上げは順調な経済を前提に過熱によるバブルを防ぐための金融政策であることから、利上げ=好景気となります。

 つまり今回の利上げは、アメリカ経済の順調な拡大が背景にあり、利上げ開始後は当面順調な経済の拡大が続く可能性が高いと言えそうです。

(図2 利上げ局面と景気後退期の関係)

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 さらに注目したいのは、1994年の利上げです。この時は短期間に3%の金利を6%まで急激に利上げしました。インフレ率が高くない状況で行われたこの利上げは急速に拡大する景気に対して予防的に利上げを行い、一時的に成長率を抑えることで2001年3月まで120ヶ月に及ぶアメリカ経済の景気拡大を実現させました。

 このことから、利上げ=景気後退ではないことがはっきりとします。今回の利上げが適切に実行されれば、このような長期にわたる景気の拡大も可能となります。

株価への影響

 利上げによる株価への影響はFF金利とダウ工業平均株価の関係からみてみたいと思います。

 一般に、利上げにより企業が銀行に支払う利払い費用が増えることから、企業業績へは悪い影響が出ると言われています。

 しかし、前述のとおり、利上げは好景気のもとインフレ圧力を抑えるために行なわれることが多く、その場合、企業業績は景気とともに改善する傾向があることが図3に示すグラフからわかります。

 過去のFF金利とダウ工業平均株価の推移を見ると、 米国の金利上昇局面では、全て株価が上昇しています。

 

(図3 利上げ局面とダウ工業平均株価の推移)

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 さらに直近3回の景気後退局面において、株価の下落はリーマンショックでの下落率が突出していることから、リーマンショックという出来事がいかにすごいものであったかがわかります。

債券への影響

 利上げにより悪い影響を受けるのが、債券になります。金利上昇により低い利回りの債券が売られ債券価格は下落し利回りが上昇します。

 金利が上がり、信用リスクも低下することから、新興国の債券も下落し、ドルにお金が流れるため、ドル高になると一般的には言われています。

 過去のFF金利とアメリカ10年国債の利回りを比較すると金利上昇局面では、債券利回りは上昇し債券安となることがわかります。

(図4 FF金利と米国10年債利回りの推移)

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次の景気後退局面はいつか?

 では、利上げにより景気が後退するという記事をよく見ますが、景気後退はいつ起きるのかについて考えてみたいと思います。

利上げ後に景気後退は起きないことも

 最初に1994年の利上げ局面では、利上げ後も長期にわたり景気の拡大が続き後退局面のないまま次の利上げに入ったことから「利上げ」→「次は景気後退」ではないことを理解する必要があります。

アメリカ長期金利に注目した景気後退時期

 アメリカの長期金利に注目すると、直近3回の景気後退の前にはFF金利が上昇し、10年国債の利回りを超えていることがわかります。

 あくまで一つの目安にすぎませんが、今後利上げによりFF金利が10年国債利回りを超えるようなことがあれば景気後退の可能性があると認識したほうが良いかもしれません。

 ただし、今回の利上げは非常に緩やかであると予想されているため、このような事象が起きる前に他の要因により景気後退期に入る可能性もありますので、今後ヨーロッパや中国の情勢にも注意が必要です。

(図5 図4に利上げ後に2つの金利がクロスしたところをマーキング)

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 今回使用した経済指標の推移とダウンロード方法に関する記事です。

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