3月15日に決定したアメリカ政策金利の利上げはなぜ緩やかと言えるのか。そして、今後の見通しについてまとめました。
FOMCは利上げを決定
米連邦準備理事会(FRB)が3月15日まで開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り利上げを決定、FF金利を0.75%から1.00%に誘導するよう政策金利を0.25%利上げしました。
(グラフ1:アメリカ政策金利の推移)
そして市場は少なくとも年内3回の利上げを織り込んでおり、イエレン議長が明確に利上げを示唆するコメントを出していたため事前に金利は上昇し、REITは下落していましたが、今後の利上げは市場の大方の予想よりも緩やかなペースになると示唆したため、安心感から金利は低下し債券が上昇、REITも上昇、為替はドルが売られました。
利上げの背景は?
今回利上げが決定された主な理由は
- 堅調な雇用の伸び
- インフレ率が目標の2%に近づきつつある
- 設備投資に改善が見受けられる
といった背景があります。
実際にFOMCでの予測も、
- 失業率は現在の4.7%から4.5%に改善する
- インフレ率は1月で1.9%。来年は2%となる
- GDPは2.1%の成長
と実際の予測値も追随しています。今回の利上げはこのような好調な経済が背景にあります。
なぜ緩やかに上昇するといえるのか?
市場が緩やかに金利が上昇すると判断した理由は、今回FOMCで利上げのペースを早める意思がないということが確認できたからです。
下のグラフはFOMC参加者の金利予測を分布した「ドット・プロット」となります。市場関係者はこのグラフの中央値から今後の金利変動を予測しています。
(出展:FRBより)
少しわかりにくいので、ドットを数字化したグラフを作成しました。黒字が前回利上げを行った昨年12月の参加者によるもので、赤字が今回の参加者による予測値となります。
2017年末の中央値は1.375(1.25-1.5)%となっています。今回は0.5-0.75%から0.75-1.00%まで0.25%の利上げですので、今後0.25%が2回行われる可能性が非常に高いと言えます。これで年3回となります。
また、2018年以降の中央値も2019年に多少上昇しているものの、長期的にも0.25%の利上げが年3回程度行われる緩やかな利上げとなると判断できます。
今後FOMCが開催された場合は、金利の予測値を示す「ドット・プロット」を確認する必要が重要といえます。
利上げによる影響は?
利上げによりどのような影響が生じるか?よく株価が下がるといった話を聞きますが、過去の利上げ局面を検証すると
- 金利上昇により債券価格は低下
- 株価は上昇傾向
- 為替は円安になると言われているが円高の場合も
過去の利上げ局面における、株価と債券価格の検証は次の記事で行っていますので参照してください。
また日本の金利も上がるのではないかと言われていますが、今回そのようなことはないというコメントが出ていますので、それほど心配する必要はなさそうです。