国際不動産に投資する投資信託を選ぶ時にまれに、S&P新興国指数というものをみかけます。発展がめざましい新興国の不動産に投資できることから、今後の投資先として的確なのか指数の特徴について詳しく調べてみました。結果、投資にはあまり向いていないことがわかりました。
S&P先進国REIT指数とは
この指数は、7カ国の新興国市場の不動産投資信託から構成されており(2017年3月末時点)、スタンダード&プアーズ・ファイナンシャル・サービシーズ・エル・エル・シー社(S&P社)が1995年1月1日に設定・算出・公表している指数です。
S&PグローバルREIT指数との違いは
S&PグローバルREIT指数とS&P新興国REIT指数は異なるもので、グローバルが上位指数、新興国が下位指数となります。表のようにS&PグローバルREIT指数を構成する23カ国の投資国のうち、新興国7カ国により算定された指数が新興国REIT指数となります。
日本で販売されているインデックス型投資信託には、これら4つのインデックス指数をベンチマークとするものが多くなっていますが、S&P新興国REIT指数はこの中でも設定数が少なく、投資家には馴染みのない指数となっています。
指数 | 投資国 | ||||
---|---|---|---|---|---|
S&PグローバルREIT指数 |
S&P先進国REIT指数 |
S&P先進国REIT指数(除く日本) |
先進国16カ国 |
先進国(除く日本)15カ国 |
|
S&P日本REIT指数 | 日本 | ||||
S&P新興国REIT指数 |
新興国7カ国 |
国別の組み入れ銘柄数と構成比率
国別の構成状況は、新興国7カ国となっており、組み込まれている銘柄数は40銘柄となっています。(2017年2月現在)
投資対象に地政学的リスクが大きい国がある上に、分散を考える上では7カ国と構成国が非常に少ない指数となっています。
これは、指数に組み込まれるためには、各国のREITに関する法的基準を満たす必要があるため7カ国のみとなっています。例えば、中国にはREITに関する法律がないため不動産市場が大きくても指数にはふくまれません。
国名 | 組入れ銘柄数 | 構成比 |
---|---|---|
南アフリカ | 11 | 51.9% |
メキシコ | 8 | 23.9% |
タイ | 8 | 9.4% |
マレーシア | 7 | 6.4% |
トルコ | 4 | 6.1% |
台湾 | 1 | 1.3% |
ギリシャ | 1 | 0.9% |
(2017/2/28時点 銘柄数はS&P Dow Jones Indices、構成比はeMAXIS 新興国リートインデックスのポートフォリオより)
用途別(セクター別)構成比
用途別の構成比は次のとおりです。各種・分散型投資型の割合が大きくセクター別で見ると分散されていることがわかります。
長期・短期のリターンとリスク
2017年2月末時点のリターン(配当込み)は円換算で良好な成績を残しています。2008年のリーマンショックを含む10年間のリターンは2.5%となっていますが、さらに長期の20年間では8.9%と投資先としては申し分のない結果となっています。
年率平均 | 1年 | 3年 | 5年 | 10年 | 15年 | 20年 | 30年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
円換算 | リターン (%) | 13.4 | 4.6 | 8.5 | 5.2 | ー | ー | ー |
リスク (%) | 19.4 | 17.5 | 19.1 | 23.4 | ー | ー | ー |
(2017年2月末現在、出典:『わたしのインデックス』)
また、 S&Pグローバルリート指数と比較すると、比較できる期間が限定されますが、全体的にリータンは少なめ、リスクは高めということがわかります。
年率平均 | 1年 | 3年 | 5年 | 10年 | 15年 | 20年 | 30年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
円換算 | リターン (%) | 13.4 | 12.4 | 17.9 | 2.5 | 9.0 | 8.9 | ー |
リスク (%) | 17.2 | 15.5 | 15.8 | 25.0 | 21.8 | 21.2 | ー |
S&P新興国リート指数の評価=投資に向かない理由
新興国REITに投資に可能性を見出したくて調べましたが、結果は「新興国REITは投資に向かいない」という結論でした。
その理由としては、
- 投資対象国が新興国7カ国と少ない(インデックス型としては分散できていない)
- 投資対象国に政治的リスクが高い国が多い(トルコやタイ)
- 投資対象国に地政学的リスクが高い国が多い(台湾や南アフリカ)
- 過去のリターンがそれほど大きくなく、リスクは高め(先進国REITの方が優位)
以上より、新興国に投資する際には、REITではなく株式などを検討すべきという結論に至りました。
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