NISAや積立NISA、そしてiDecoをつかった長期投資が当たり前に時代になってきました。その中でもオーソドックスなインデックスであるS&P500に長期投資した場合のリスクを考えてみました。
よく長期投資ではリスクが1標準偏差(以下±1σ)におさまることが多いと言われますが、実際にそうであることを確かめました。
これから長期でほったらかし投資を行う方には読んで欲しい記事です。
20年30年の長期投資将来の運用結果の幅は?
長期投資におけるシミュレーション方法はこれまでに、ルートt倍法、モンテカルロ法を記事にしました。長期投資ではルートt倍法は結果が良すぎる結果となり適合が悪いので、モンテカルロ法をオススメしています。エクセルの知識があればなんとかなるので便利です。
証券会社が運用するサイトでもモンテカルロ法による投資シミュレーションのサービスが提供されています。
投資リスクと発生確率
リスクとリターンの乖離の結果がどのような結果で生まれるのかというと。毎年のリターンが正規分布であると仮定すると、N年後のリターンのぶれ(乖離)は
- リスクのプラスマイナス1倍(±1σ)の範囲に入る確率=68.2%
- リスクのプラスマイナス2倍(±2σ)の範囲に入る確率=95.4%
- リスクのプラスマイナス3倍(±3σ)の範囲に入る確率=99.8%
となります。
100%に近い確率で±3σの範囲に収まるのですが、今回はSP500指数における過去の変動幅をみてみます。
(出展:正規分布 - Wikipedia)
S&P500指数過去30年のリターンとリスク
1988年1月から2018年1月の30年間における、S&P500指数(ドルベース、プライスリターン(配当なし))のリターンとリスクは、
- リターン8.2%
- リスク14.0%
となっています。(https://jp.investing.com/indices/us-spx-500より筆者算出)
S&P500を採用した理由は、
- 米国は過去も将来も安定した成長が期待できる
- 米国の代表的な株価指数である
であるからです。おそらく今後も同様のリターンとリスクを残していくと考えています。
ただ、今回はドルベースを使っているので円ベースにすると、5%程度リスクが大きくな流ことに注意が必要です。
長期投資におけるS&P500指数のリスク幅
過去のリスクとリターンを使用しているのである程度のリスク範囲に収まる結果となることは想定しながらも、30年、20年のデータを図化しました。
30年間の指数とシミュレーション結果
1988年から30年間の価格変動とモンテカルロ法によるシミュレーション結果を重ねてみました。表示は対数表示です。
2000年までのITバブルで+1σを超えていますが、20年以上の長期投資の結果、振れ幅は小さくなり、±1σの範囲内に収まっています。
注目すべきは2008年のリーマンショックでは指数は半減していますが、シミュレーション上は±1σに収まっていることです。
ここからわかるのは、長期投資では徐々にリスクが漸近していくということがわかりました。仮に19年にリーマンショック級の経済危機が来たとしても、−1σを下回ることはありません。
30年のうち任意の20年の指数とシミュレーション結果
30年のリターンとリスクを使い、リーマンショックが後半と有利な条件で計算した結果だけではわからないので、30年のうち任意の20年間のS&P500の動きを見てみました。
任意の20年とは1つ目が「88年1月から08年1月」、次が「88年2月から08年2月」と一つずつずらし、最後は「98年1月から18年1月」の120パターンです。
一番いい結果は1988年1月から2008年1月までの20年間。一番悪い結果となったのは、1989年2月から2009年2月までの20年間とリーマンショックの底値で終わるこのパターンが一番厳しい結果となりました。
このグラフのままでは意味がないので、横軸の1から241までの間の最高値と最大値(上のグラフを包絡する線)、そして30年間のリターンとリスクを使ったシミュレーション結果をグラフにしました。
15年間ぐらいは±1σをはみ出すことがありますが、20年に近づくにつれ、リーマンショック級の暴落があっても±1σの中に収まって来ています。
120サンプルがあるにも関わらず、約68.4%の±1σの範囲内に収まるという結果になりました。本来なら40近いサンプルがはみ出す確率ですが、長期投資においてはリスクが収斂していくことがわかりました。
何となくこうだろうとは想像していましたが、思ったような結果を視覚的に確認できました。
ほったらかし投資のアメリカ国株リスクまとめ
最後にまとめです。
- アメリカのように長期的に経済が安定して成長している国に長期投資する場合は、将来の投資結果が±1σの範囲内に収まる可能性がかなり高い。
- 最終的には±0σ(ゼロシグマ)あたりが期待値
つまり、長期投資においてはーσを目標値に持っておけば、いい終わり方ができる可能性が高くなります。
あくまで投資は自己責任ですが、参考にしていただければ幸いです。
あわせて読みたい関連記事
下の記事では、S&P500(配当こみ指数・ドルベース)の過去90年間のデータも掲載しています。マイナスが21回、プラスが69回となっています。勝率が77%ととてつもなく安定した指数となっています。
さらに3年連続のマイナスは2回しかなく、最後のマイナスが2008年のリーマンショック時となり、2009年以降は2016年まで連続してプラスの結果を残しています。