退職後の生活の支えとなる退職金について、人事院が民間企業の調査を行っていましたので、その結果を整理して紹介します。
ざっくり結果を言うと、国家公務員の退職金は官民を比較の結果、とっても恵まれていました。
民間の退職金及び企業年金の調査結査結果
この記事は17年4月19日に公開された民間企業の退職金及び企業年金に関する人事院の調査結果を元に書いています。(民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について)
ことわりのない限り上記調査からの引用となります。
調査の概要
この調査は5年毎に実施されており、今回は平成28年8月におこなわれています。
調査方法としては、
- 企業規模50人以上の民間企業41,963社から抽出した7,355社のうち回答のあった4,493社を集計
- 退職給付(退職一時金及び企業年金)制度の有無や内容
- 平成27年度中に退職した勤続20年以上の事務・技術関係職種の常勤従業員の退職給付額
となっています。
定年制の有無
民間企業における定年制度の有無については、全体でで99.1%の企業が定年制を設けていました。
そもそも定年制がない企業では退職金の給付自体がない場合も多いようです。
退職給付制度の普及状況
退職給付制度の有無
退職一時金や企業年金制度またはその両方の制度を設けている企業は全体の92.6%でした。
退職給付制度がない理由(複数回答)としては、
- 従業員の流動性が高い、設立から間もなく従業員の在職期間が短い(50%)
- 年俸制、出来高払い制など短期的な実績を重視した賃金体系(34.7%)
- 定年制がない(5.5%)
- その他(21.5%)
- 不明(1.9%)
となっており、退職給付制度のない企業では、別の賃金体系をとることで従業員の賃金を考慮している場合もあるようです。
退職給付制度の内容
上記の退職給付制度を設けている企業92.6%のうち、その内容を円グラフとすると次のようになります。
全体の48.3%が退職一時金制度のみを採用、企業年金も普及が進み12%の企業が企業年金のみとなっています。
民間企業につとめるサラリーマンの勤続年数別平均退職給付額
全規模(従業員50人以上)の企業における退職給付の平均額を表にしました。
勤続年数 | 定年退職 | 会社都合退職 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
退職 一時金 |
企業年金 現価額 |
退職 給付額 |
退職 一時金 |
企業年金 現価額 |
退職 給付額 |
|
20年 | 4,170 | 2,448 | 6,618 | 5,803 | 3,900 | 9,704 |
21年 | 4,179 | 3,468 | 7,647 | 8,256 | 5,811 | 14,067 |
22年 | 4,131 | 4,018 | 8,149 | 8,840 | 6,850 | 15,691 |
23年 | 4,031 | 4,681 | 8,712 | 9,173 | 6,792 | 15,965 |
24年 | 4,328 | 5,209 | 9,536 | 9,430 | 7,901 | 17,331 |
25年 | 4,950 | 5,679 | 10,628 | 10,290 | 9,028 | 19,318 |
26年 | 6,159 | 5,590 | 11,749 | 11,101 | 9,809 | 20,911 |
27年 | 6,464 | 5,661 | 12,124 | 12,081 | 10,185 | 22,266 |
28年 | 6,594 | 5,978 | 12,571 | 13,399 | 10,956 | 24,355 |
29年 | 5,659 | 7,066 | 12,725 | 14,218 | 13,637 | 27,855 |
30年 | 6,003 | 7,620 | 13,623 | 14,005 | 14,243 | 28,248 |
31年 | 6,331 | 8,168 | 14,499 | 13,591 | 14,890 | 28,481 |
32年 | 7,157 | 9,676 | 16,833 | 12,528 | 14,788 | 27,315 |
33年 | 8,667 | 11,543 | 20,210 | 11,724 | 15,556 | 27,279 |
34年 | 9,246 | 12,946 | 22,193 | 11,393 | 16,108 | 27,501 |
35年 | 9,639 | 14,585 | 24,224 | 11,421 | 16,389 | 27,811 |
36年 | 9,534 | 15,774 | 25,308 | 11,526 | 16,332 | 27,858 |
37年 | 9,391 | 15,760 | 25,150 | 12,565 | 15,292 | 27,857 |
38年 | 9,360 | 15,238 | 24,598 | 13,098 | 14,617 | 27,714 |
39年 | 9,598 | 12,867 | 22,465 | 13,704 | 13,769 | 27,473 |
40年 | 9,763 | 14,002 | 23,764 | 11,014 | 14,001 | 25,015 |
41年 | 9,620 | 14,061 | 23,681 | 7,875 | 15,647 | 23,522 |
42年 | 9,616 | 14,139 | 23,755 | 6,206 | 16,964 | 23,169 |
43年 | 9,712 | 13,575 | 23,287 | 5,186 | 16,997 | 22,183 |
44年 | 13,620 | 12,239 | 25,859 | 非公表 | 非公表 | 非公表 |
45年以上 | 17,216 | 11,426 | 28,642 | 48,418 | 3,062 | 51,480 |
(単位:千円)
(注意)
1「退職一時金」の額は、退職金規程等に基づき支給される保険、動産等を金額換算 したものを含む額である。
2退職給付額は、端数処理の結果、退職一時金と企業年金現価額の合計額と一致しな い場合がある。
3 退職給付の額は、3年移動平均値を使用。
4 退職者数は母集団に復元した上で四捨五入したものであるため、退職者計と内訳の 合計が一致しない場合がある。
5 「非公表」は、個人情報保護の関係から非表示とした箇所。
やはり会社都合で若いうちに辞める場合退職給付は大きくなりますね。
企業規模(従業員数)別の平均額
従業員の数別の退職給付額は次のとおりです。大企業であるほど退職給付額が大きくなることがわかります。
勤続年数 |
規模1,000人 以上 |
規模500人以上 1,000人未満 |
規模100人以上 500人未満 |
規模50人以上 100人未満 |
---|---|---|---|---|
20年 | 9,338 | 7,335 | 6,090 | 4,846 |
21年 | 10,356 | 9,218 | 6,881 | 5,205 |
22年 | 11,890 | 9,480 | 6,898 | 5,071 |
23年 | 13,109 | 9,048 | 6,843 | 5,648 |
24年 | 14,088 | 10,066 | 6,868 | 7,298 |
25年 | 14,611 | 10,544 | 8,254 | 8,016 |
26年 | 15,255 | 11,005 | 10,241 | 8,631 |
27年 | 15,829 | 10,427 | 10,757 | 7,618 |
28年 | 17,335 | 10,447 | 10,886 | 8,706 |
29年 | 17,702 | 13,639 | 9,808 | 7,429 |
30年 | 17,724 | 14,815 | 11,138 | 8,082 |
31年 | 19,141 | 15,897 | 11,148 | 6,993 |
32年 | 22,585 | 16,132 | 12,771 | 9,022 |
33年 | 26,528 | 17,814 | 12,438 | 9,991 |
34年 | 27,579 | 19,781 | 13,707 | 11,120 |
35年 | 29,526 | 21,350 | 14,064 | 14,484 |
36年 | 30,990 | 21,770 | 15,224 | 17,338 |
37年 | 31,072 | 21,958 | 16,150 | 18,116 |
38年 | 30,595 | 21,578 | 16,604 | 18,553 |
39年 | 27,441 | 20,746 | 17,106 | 17,597 |
40年 | 26,153 | 19,192 | 16,981 | 16,466 |
41年 | 26,003 | 19,753 | 17,881 | 15,994 |
42年 | 25,904 | 20,042 | 18,171 | 17,622 |
43年 | 25,589 | 20,896 | 19,348 | |
44年 | 27,613 | 25,664 | 25,363 | 4,061 |
45年以上 | 44,680 | 25,776 | 20,816 |
(単位:千円)
グラフにすると大企業が恵まれていることがよくわかります。
公務員の退職金はいくら?
人事院の調査結果には国家公務員の退職給付についても、掲載がありましたので載せておきます。
勤続年数42年で高卒と思われる方の退職金が2500万円弱と企業規模1000人を超える大企業並みの金額となっています。
ある意味、高卒公務員は世の勝ち組かもしれません。
勤続年数 |
定年退職の 場合 |
---|---|
31年 | 23,184 |
32年 | 23,326 |
33年 | 23,382 |
34年 | 24,926 |
35年 | 25,386 |
36年 | 25,429 |
37年 | 25,465 |
38年 | 25,377 |
39年 | 24,625 |
40年 | 24,818 |
41年 | 25,055 |
42年 | 24,869 |
43年 | 25,011 |
44年 | 非公表 |
45年以上 | 28,166 |
(単位:千円)
民間サラリーマンと公務員の退職金を比較
最後にこの調査の一番の目的である民間企業と国家公務員の退職金を比較しました。金額の比較は調査結果にも掲載されていて、比較の結果78万1千円公務員の方が多い結果となりました。
さらに定年退職する人の退職給付額をグラフにすると、赤の公務員が大卒の勤続38年では民間平均に拮抗していますが、その前後では民間を超える額となっていました。
特に勤続42年の高卒公務員や勤続年数が32年ぐらいの公務員は大企業並みの給料となっています。
公務員の給与制度は掘り下げないと騙されてしまいますね。
まとめ
- 民間は企業規模が大きいほど退職給付も大きくなる
- 民間企業は勤続38年ぐらいで金額がマックスに
- 公務員は勤続38年以外でも金額は多い
- 公務員の給与制度は掘り下げると民間より高かった!
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