今回は投資におけるリバランスの必要性と実施タイミングについて実際のデータを用いて検証してみました。
毎月リバランスを行っている人やリバランス全く行っていない人は最後まで読んでいただけると参考になると思います。
リバランスとは
投資でよく耳にするリバランスは野村証券のサイトでは次のように解説されています。
ポートフォリオ運用を行う際に、相場の変動などにより変化した投資配分の比率を調整すること。ポートフォリオの一部を売却したり、買い増しをすることによって行う。
一般に、運用開始当初の比率を維持していく方法と、相場の変化に応じて投資配分比率自体を変更しながら調整していく方法がある。*1
リバランスの必要性の検討
検討ポートフォリオ
検討に使用するポートフォリオは、次のグラフのとおり4資産に均等配分したものとします。
(グラフ1:今回検討するアセットアロケーション)
この4資産のデータは実際のインデックス型投資信託のデータを利用します。
本来であればインデックス型は手数料などを考慮して選ぶべきですが、今回はもっとも長期の月次データが得られるものを選びました。
選んだ4銘柄によるデータが揃うのは2004年(平成16年)5月末から2017年4月末までの13年間のデータとなります。
(グラフ2:各ファンドの2004年5月末の基準価格を10000円に調整しグラフ化)
リバランスの考え方
リバランスには2つの方法があると解説されていますが、今回は次の3つの方法を前提条件とします。
中でも3の相場に応じてという方法は一般投資家、特に「ほったらかし投資」を行う方には不向きですので参考手法とします。
- 常に構成をあらかじめ決めた比率で維持する。厳密に行うと毎月の売買による維持が必要になります。年に1回など頻度を落とした方法もあります。
- 当初設定した比率から一定割合の乖離が生じた場合にリバランスを行う。
- 相場の変化に応じて投資配分比率を変更しながら調整。
さらにこの3つを細分化し、今回次の6パターンを設定しました。
- リバランスをしない
- 毎月の購入時に実施
- 年末(12月末)の購入時に実施
- 20%乖離した場合に実施(25%の設定が20%か30%になった場合)
- 30%乖離した場合に実施
- 35%乖離した場合に実施
リバランスの必要性
設定したポートフォリオで6パターンのリバランス手法により13年間運用した場合の運用結果は次のとおりです
(グラフ3:13年間の運用結果)
リーマンショックあたりから投資額を下回る時期がありますが、13年後には624万円の投資が900万円を超えるまで増えています。
長期投資ならリバランスをしてもしなくても損をしないことが嘘ではないことがわかります。
グラフでは大きな差がありませんが、数値を表したものが次表です。結果として、リバランスなしがもっとも悪い結果となり利益が最大約1割少なくなりました。
また、35%の乖離でリバランスを行うともっとも良い結果が得られることもわかります。(40%にするとリバランスが発生しない)
ここから得られた結論としては、
リバランスは必要!
まずは、必要性についての答えとなります。
運用結果 | 運用益 |
リバランス 無しとの差 |
年率リターン | |
---|---|---|---|---|
リバランスなし | 9,189,375 | 2,949,375 | - | 3.02% |
毎月 | 9,258,885 | 3,018,885 | 69,510 | 3.08% |
年末 | 9,364,695 | 3,124,695 | 175,320 | 3.17% |
20% | 9,404,017 | 3,164,017 | 214,642 | 3.21% |
25% | 9,273,163 | 3,033,163 | 83,788 | 3.09% |
30% | 9,389,466 | 3,149,466 | 200,091 | 3.19% |
35% | 9,507,760 | 3,267,760 | 318,385 | 3.29% |
(表1:各リバランス手法ごとの運用結果)
リバランスのタイミング
次にどのタイミングでリバランスを行うべきかを考えます。表1からも35%乖離でリバランスを行うともっとも良い結果となることがわかりますが、下落時の影響など途中の動き見て考えます。
グラフ4でリバランス無しの場合との損益の差をグラフ化しました。ほとんどのケースでリバランスを行った方が、リバランス無しよりより良い結果を得られます。
ただし、毎月リバランスは2008年のリーマンショック時にリバランス無しの場合が50万円の損失を出す中、損失がさらに4万5千円(約1割)大きくなる結果となりました。
ケース別の特徴としては
- 毎月リバランス:下落局面に弱く、最終の結果も悪い(6位)
- 年末にリバランス:13年間安定した結果(4位)
- 20%でリバランス:上昇局面で良い結果(2位)
- 25%でリバランス:回数2回と少ない。全体を通して安定(5位)
- 30%でリバランス:回数2回と少ない。下落局面からの立ち上がりがよいが、上昇を捉えきれず(3位)
- 35%でリバランス:回数2回と少ない。上昇局面で良い結果を得やすい(1位)
リバランスを多く行うことは、結果が悪くなる傾向がわかりました。リバランスは少ない方が良いようです。ただし、リバランスを少なくする場合は回数が減るためリスクも高まるので注意が必要です。
(グラフ4:リバランス無しとの収益の差)
注意が必要な毎年リバランス
下落局面についよ毎年リバランスはここまで年末(12月)にリバランスを行う方法で比較しました。これは税制の面等でもっとも多いパターンでわかりやすいためですが、年度末(3月)やセルインメイ(5月)でも行ってみました。
日本株の月別変動(セルインメイについても)についての記事はこちらです。
アメリカ株の月別変動(セルインメイについても)についてはこちらの記事でご覧ください。
グラフ5はその比較ですが、結果として年末に毎年リバランスを行う方法が良い結果となりました。
原因は偶然に近いものだと思いますが、毎年リバランスを行う場合、何月に実施するかで結果に差が生じることを理解する必要があります。
(図5:毎年リバランスの実施月による差(リバランス無しとの比較))
リバランスについてまとめ
今回リバランスについて検討した結果をまとめると、
- リバランス無し(真のほったらかし投資)や毎月リバランスはNG
- リバランスは年1回以下の頻度で実行
- リバランスは当初設定比率から一定の乖離で実行がより大きな利益に(乖離はある程度大きく設定)
上記は今回設定したアセットアロケーションと運用期間によるものですので、あくあで目安として考えてください
個人的には、年末にNISA枠の残りをうまく使ったリバランスが単純で時間もかからず一番いいのではないかと思います。