米国株式に対して投資する方法は、国内ならば投資信託や上場投信(ETF)、アメリカの株やETFを直接買う方法がありますが、日本から投資するのであれば、どちらの方法であっても必ず為替変動によるリスクを考える必要があります。
今回は過去10年のS&P500指数における為替リスクの影響を考えてみました。
S&P500指数における過去10年おける為替リスク
今回使用するデータは、下の記事で紹介したS&P ダウ・ジョーンズ・インデックス - S&P 500より配当込みのトータルリターンの日時データを10年分2538日分をダウンロードし、月次・年次データを作成して使用しました。
このトータルリターンは配当を考慮した指数(税引き前)となっています。
リーマンショックは日本人にもアメリカ人にも大きな下落だった
リーマンショック前のS&P500指数の最高値は07年10月となります。
この時を100とした場合の17年7月末までの価格変動とドル円の為替変動が次のグラフになります。
(S&P500トータルリターンとドル円)
07年の金融危機に端を発し、08年のリーマンショックではさらに下落。09年月には円ベース・ドルベースともに50ポイントを割り込んでいます。
ドルベース円ベースの08年から17年までの年別のリターンを調べてみました。
(S&P500指数ドルベースと円ベースでのトータルリターン)
ここで驚くべきことは7年から下落した指数は、ドルベースで見ると09以降一度もマイナスになっていないことです。
一方の円ベースはというと、08年の下落が円高もあり際立っています。その後も円高の状態が続いたためマイナスが続きますが、12年の年末に安倍政権が誕生し、年末に為替が大きく円安に振れました。その結果12年から14年はドルベースのリターンを上回っています。
アメリカ人にとってのリーマンショク
ドルで米国株に投資できるアメリカ人にとってのリーマンショックは、ただの一過性の下落だったのではないかと考えています。09年の底値から順調に上昇しているグラフを見るだけで安心できます。
12年初頭には07年10月の水準まで値を戻しています。それ以前に購入した資産も考慮すると、「長期保有・ほったらかし投資」を実践している人は相当早く持ち直したのではないでしょうか。
日本人にとってのリーマンショック
円で給料をもらいドル転をして米国株に投資している日本人にとっては、米国投資も長らく我慢の時代が続きました。アベノミクスが始まるまでの民主党(現民進党)政権による無策が投資家を悩ませた結果です。
07年10月の水準まで値を戻したのは13年中盤とアメリカより1年以上遅れています。
その後、アベノミクス以降は円安が進み一時期はドルベースのS&P500指数を上回る時期もありました。17年7月現在では110円前後と07年10月頃の水準となっています。
【数値で見る】ドルベース・円ベースのリターンとリスクは
最後に08年から17年(7月末で)のリターンとリスクを調べてみました。リターンとリスクは年次データがあれば、誰でもエクセルで簡単に求めることができます。
上の記事の方法で求めたリターンとリスクがこちらです。
SP500 (ドルベース) |
SP500 (円ベース) |
|
---|---|---|
リターン | 8.4% | 8.2% |
リスク | 17.9% |
27.6% |
リターンはドルベース、円ベースはそれぞれ8.4%、8.2%と為替が元に戻った影響でほとんど結果に差がありません。
リスクはというと、為替変動の影響でドルベースの17.9%に対し、円ベースでは27.6%と為替リスクが10%も上乗せされています。
投資家は為替リスクにどう備えるべきか?
次に長期投資を前提に為替リスクにどう備えるかを考えます。アメリカに移住してアメリカで稼ぐとかいうのは無しです。日本で働きアメリカに投資することも前提とします。
為替ヘッジ有りの投資信託へ投資する
日本の投資信託に為替ヘッジを行うものがあります。残念ながらS&P500指数に連動するものはありません(S&P500配当貴族指数は有り)。
為替ヘッジをかけることはリスクを軽減できる方法ですが、そもそも米国株式に投資することはハイリスク・ハイリターンで有りながらも成長が望める米国企業に投資することを目的としています。
これを為替ヘッジにかかる手数料でリターンを落とすことは得策とは言えません。アセットアロケーションに国債を入れるなどの方法でリスクを落としたほうが良いと言えます。
また、そもそも超長期的には為替は円安方向に進む可能性が高いとも考えているので為替ヘッジは限定的に採用するべきと言えます。
ドル円が長期的に円安方向だということはぞうさんもの記事も参考に。特に総資産とインカムゲインの考え方はスマートです。
それでもリスクが心配という方は、長期投資ではリスクはリターンほど大きくならないことを次の記事で確認してください。
絶対おすすめ!定額投資によるドルコスト平均法でほったらかし!
このブログのタイトルにもあるように、私の基本的な投資スタイルはほったらかし投資術です。
為替リスクを抑える最も良い方法はドルコスト平均法であることは以前、5分でわかる!ドルコスト平均法による投資メリット 〜ほったらかし投資に最適〜 - ほったらかし投資の達人でも紹介しました。
この方法であれば、安いとは多く買い、高い時に少なく買うことを意識せず実行でき結果として、価格変動リスク・為替リスク両方に強みを発揮します。
今回はS&P500指数で積み立てのシミュレーションしてみした。
円ベースは序盤苦戦しますが後半でドルベースを追い越します。米国株に投資する方に共通するものとして、株価は順調に推移という前提がありますので、円高の時に多く買えばいつか報われるということになります。
この結果を理解すれば、今後多少の円高となっても安心して投資を続けることができそうです。
最後にまとめ
米国株式投資における為替リスクについてのまとめです
- 日本に住んでいる限り、通貨は円なので為替リスクは避けられない
- ドル円の為替変動は投資のリスクを10%近くあげることもある
- 長期的には円安方向に進むと考えるのであれあ円高は投資のチャンス
- 為替リスクを抑える方法はドルコスト投資において定額積立が良
- 定額積立による長期投資ならならドルベースの運用結果を上回ることもある
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